今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。
今回は【 同軸コネクタ編(その2)】です。
<取材協力:ユウエツ精機株式会社様>
謎の男女関係
■ 間違いやすい呼称
- - PとかJとか色々あってよく分かりません
同軸コネクタは凹と凸の中心導体をかみ合わせることで同軸構造を保ったまま確実な接続を実現しています。したがってコネクタが凹と凸のどちら側であるかを明示する必要があり、そのための表記としてPやJなどの記号が用いられます。
中心導体の形状:凸 中心導体の形状:凹 オス(雄) メス(雌) M:(Male) F:(Female) プラグ ジャック P:(Plug) J:(Jack) <図2 A,B>はBNCのジャックとプラグを示しています。図からは分かりにくいのですが、Aが中心導体が尖ったプラグ(P,M,オス)で、Bは中心導体が凹状になったジャック(J,F,メス)です。一方、同図のCは同じBNCのメスですが、機器のパネル面などに取り付けるためのもので、この場合はレセプタクル(Receptacle 記号:R)と呼ばれます。同図はストレートタイプの前側ねじ止め式のレセプタクルですが、他にも取り付け面がフランジ(ねじ穴の空いた四角いツバ状)になったものやプリント基板に直付けするもの、直角方向に取り付けるものなど様々なタイプがあります。
ちなみに、<図2>のDとEはBNCのT型分岐コネクタとNからBNCへの変換コネクタです。それぞれ各端子のオスとメスの関係を含めて示すと、図のT分岐はジャック-プラグ-ジャックになっているので[BNC J-P-J]、変換コネクタの方は Nのオス(Mail)とBNCのメス(Female)が付いているので[N-M BNC-F]ということになります。
オス-メスの関係で注意したいのは、SMBのコネクタです。SMBは<図3>に示したとおりプラグ(オス)の中心導体が凹状(メスコンタクト)となっていて他のコネクタとは逆だからです。<図4>にはSMAの場合を示しておきましたので較べてみてください。
細かな気配り
■ ケーブルアセンブリ
- - ケーブルとの接続は自分でやってもかまいませんか
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ケーブルを指定された寸法でカット後、締付金具・座金・ガスケット・クランプの順で通す。
編組線をときほぐしてクランプ上に折り返し、クランプのつばよりはみ出た編組線はカットする。カット後、中心コンタクトをはんだ付けする。
コネクタ本体に差し込み、締付金具で固定する。仕組みの上から言うと同軸ケーブルとコネクタは直接的かつシンプルに接続されるようになっていますので、難しいものではありません。ただし、同軸線路としてインピーダンスを乱してはなりませんので、自分でアセンブリする場合は慎重な作業が求められます。
<図5>はBNCのプラグをアセンブリする際の手順例です。各部品をケーブルに通す順序を間違わないことはもちろん、ケーブルの外皮、編組、絶縁体、中心導体各部のカット寸法(剥きしろ)はメーカーの指示書に従って正確にカットし、編組は十分に“ほぐす”といったことも厳守してください。
さらに、コネクタの中心導体をはんだ付けする際は“はんだ”の熱で絶縁体を変形させることの無いよう手早い作業を心がけてください。熱が逃げやすいように中心導体をメスのコネクタに差し込んで作業するのもひとつの方法です。
同軸ケーブルの編組処理は意外とやっかいで、作業のバラツキがでやすい、数が多い場合は圧着タイプのコネクタを使用することも多くなっています。その場合は、指定した圧着器を使い、圧着強度の管理も忘れないようにしてください。また、アンテナ設備など屋外で使用することもあると思います。その場合、多くのコネクタは自身に防水機能は備えていませんので、接続後は自己融着テープを巻くなどのシール処理を施してください。
不安定要素を取り払う
■ ケーブルアセンブリ
- - 加工に自信が持てません
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ポータブル機器の内部や通信機のボード間接続などではSMKやMMCXといった極小のコネクタと極細のケーブルを組み合わせることも多くなってきました。また、通過する信号の周波数もGHz~数十GHzと高くなってきています。
場合によってはリジット(Rigid:硬質)やセミリジットのケーブルも使われます。これらのケーブルアセンブリには精密さが要求されるほか専用の工具が必要だったりしますので、アセンブリ済みのケーブルを購入するかアセンブリ作業をコネクタメーカに委ねることで不安定要素を取り払うのが妥当です。
過信は禁物
■ 応用製品の注意事項
- - コネクタに終端抵抗が付いているのとかもありますね
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同軸コネクタの応用製品として整合された抵抗器を取り付けた無反射終端器(Termination)や減衰量が定められた固定減衰器(Attenuator)、さらに分配器や合成器、サージプロテクタなどがあります。これらのうち無反射終端器と固定減衰器は内部に抵抗器が入っているため、それぞれについて使用できる最大電力が規定されています。最大電力を超えて使用すると内部の抵抗が焼損しますので注意してください。
なお、電子計測などでは先に<図2のD>で示したようなT型の分岐コネクタを使うことがよくあります。その場合、同軸線路としての形状から外れることになるので、インピーダンス等は保証されないことも頭に入れておくとよいでしょう。