今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。
今回は【圧着端子編】です。
<取材協力:日本圧着端子製造株式会社 様>
無ハンダ・非加熱接続
■ 接続の仕組み
- - 圧着はスイッチなどの接触や半導体とかの接合とは仕組みが違うんですか。
-
圧着は、圧着端子と電線を適正な工具で塑性変形させることで端子と電線を機械的に結合するものです。簡単に言うと、変形された電線が元の状態に復元しようとする弾性と端子の残留応力によって強固な接続を実現しています<図1>。
圧着は電気的な接続性に優れる他に引っ張りなどの機械的ストレスにも強く、極めて信頼性の高い接続法です。安全面にも優れているので、電力機器などにも多数使用されています。無ハンダ・非加熱で、ガスや薬剤も使わないうえに、相手方とはネジ留めなため、接続と取り外しが容易なこともメリットです。これは屋内屋外の現場作業では重要です。
電子機器内ではユニットやモジュール間の電気接続に頻繁に使用されます。最近では、自動車やネットワーク機器などでも多くの需要があります。
図1:はんだ付けの原理
左から、撚り線、平角線、単線を圧着したもの。絶縁被覆付き端子に撚り線を圧着した例。 いずれも、端子と線材が共に変形して一体化し接続が保たれていることが分かる。ちなみに、一般用の端子材料には無酸素銅が採用されている。
用途毎に様々な形状
■ 端子と工具でワンセット
- - 大きさも形も色々あって選択に迷います。
-
圧着端子を大別すると、裸のものと絶縁被覆が付いたものになります。被覆タイプは別途絶縁の手間が要らないということもありますし、細い電線に対しては、接続端で線が急角度に曲がるのを防ぐ効果も期待できます。
舌部(ねじで留める部分)の形状は丸形を基本にYやC型にしたもの、Y型に爪の付いたものなどがあります<図2>。YやC型の端子はネジを弛めるだけで接続や取り外しができる便利さがありますが、差し込みが完全でないと外れるなどの可能性が無いわけではありません。他方、高い信頼性を要する用途には二本のネジを使う二つ穴タイプの端子もあります。
派生品としては電線の相互接続に用いる筒状の圧着スリーブがあります。
圧着に際しては圧着端子毎に指定された専用の圧着工具を使用します。端子と工具でワンセットと考えてください。工具は純手動式のものの他に電動式や空気圧式、大型端子用の油圧式のものがあります。大量の圧着向けには専用の圧着装置とテープ実装された圧着端子も用意されています。
図2:様々な端子形状がある
端子の「呼び」
■ 線材の断面積とネジ径
- - 品種を選択する際の数字と記号や意味が分かりません。
圧着端子は使用する線材とネジの組み合わせによって多くの品種があり、これらを識別するために統一された呼び方が決まっています。
例えばR5.5-6というのは、断面積が5.5平方ミリの電線を直径6ミリのネジに接続する丸形圧着端子であることを意味します<図3>。ただ、これらは使いたい線材とネジにピタリと適合するとは限りませんので、端子に適合する電線の範囲を<図4>に示しました。なお、同図でAWGとあるのはAmerican Wire Gaugeといって主にアメリカで用いられる表示法によるものです。
図3:圧着端子の呼び方図4:端子に適合する電線の範囲
正しい線材処理と工具使用
■ 作業上の注意点
- - 自分でやってみたのですが上手に圧着できません。
正しい圧着の第一条件は、使用する電線とネジ(ボルト)に適合した圧着端子を選択することと、その圧着端子に指定された圧着工具を使うことです。何れが不適合でも正しい圧着はできません。
作業上では、線材の被覆をむく長さ(剥ぎ寸法)を端子に合わせることが大切です。剥ぎ寸法は端子によって推奨値が決められています<図5>。そのうえで線材を端子にしっかり押し込みます。後は圧着工具をバレルの中心に当てることができれば誰にでも<図6>のような上手な仕上がりが得られます。
なお、絶縁被覆付きの端子に単線を接続するのは、引張強度が不足する可能性がありますので奨められません。また、端子圧着時の強度の関係から大型の端子では絶縁被覆付きのものはありません。大型の端子で絶縁が必要な場合は圧着後に絶縁カバーをかぶせるようにします。
図5:線材は端子に合った長さに剥く図6:正しい圧着形状
工具のメンテも忘れずに
■ 圧着を使った配線の注意
- - 接続など圧着後の注意事項はありますか
-
図7:正しく管理された専用工具を使う
まず、接続後に電線を強く引いたり曲げたりすることの無いようにしなければなりません。太い電線の場合は、電線を動かすとネジが弛むことも考えられます。動力機械などでは機器の振動で接続部が弛むことの無いように電線を固定するといった対策が必要です。
なお、接続後に舌部と圧着部(バレル)を軽く折り曲げる場合は10度以内程度に留めてください。また、曲げは一度だけとし、元に戻すことは避けてください。
圧着工具を使わずにペンチでカシメると言ったことは論外ですが、圧着せずにハンダ付けしようとすることがあるようです。この場合、当然のことながら引っ張り強度など圧着としての接続信頼性は得られません。また、圧着前に線材をハンダメッキする例も見受けられます。ですが、圧着は端子と線材が一体化することで成り立っていますので、ハンダはせずに裸銅線のまま圧着してください。圧着後にハンダを流すのも意味がありません。
あと、忘れがちなのが圧着工具のメンテナンスです。圧着は正しい工具を使用して初めて信頼性が確保されます<図7>。したがってガタや緩みはないかといった日頃の点検の他に、品質管理の一環として定期点検に出すといった体制が望まれます。