

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。
今回は【オンボード/ユニット電源編(その2)】です。
<取材協力:コーセル株式会社 様>

見えない敵
■ ノイズの経路
- - ノイズトラブルの心配はありませんか
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図1:ノイズの発生と伝搬ルート
電源も電子回路ですから、ノイズを全く出さないわけではなく、外部からのノイズにも一切影響されないというわけにはいきません。
さらに、電源の入力は外部とつながることになるので他へのノイズ流出ルートとなるほか外来ノイズの侵入経路にもなります。一方、出力はボード上の各回路に接続されるのでノイズの分配経路になる可能性があるという具合に、電源はノイズに対して考慮しなければならない要素を本質的に多く持っています。市販の電源はノイズに対して様々な配慮が成されているとはいえ使用に当たってはノイズに対する十分な気配りが必要です。
<図1>にノイズの発生源と伝搬ルートを示しました。オンボード電源のほとんどはスイッチング方式ですので、内部にスイッチ素子やトランスなど比較的大きなノイズの発生源を持っています。これらで発生したノイズは直接空間に放射されるほか、入出力の配線やグラウンドを通じて伝導します。
出さない・入れない
■ EMC対策
- - ノイズに対する有効な手だてはありますか
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図2:ノイズフィルタ(上)とサージアブソーバ(下)の効果
一般にノイズ対策は「シールディング」「グランディング」「フィルタリング」の三つといわれています。シールディングは、シールド板やノイズ吸収シートなどによる放射性ノイズ対策です。ケース無しのオンボード電源の近傍に感度の高い回路を配置しなければならない時になどに必要です。ちなみにノイズの結合は距離を離すことでも回避できます。言い換えると入出力の配線を近づけたり平行に配線したりすることは新たなノイズの経路を作ってしまうことになるので厳に戒めなければなりません。
二番目のグランディングは、シッカリとしたアースを確保することを意味します。太く短い配線が決め手です。グラウンドは電源出力の電流帰還ルートでもあるわけですから、大きなループを作らないようにアースポイントと配線経路を決めてください。
三つ目のフィルタリングは入力や出力にフィルタを挿入してノイズを阻止する方法です。AC/DCコンバータではAC入力側に専用のノイズフィルタ(ラインフィルタ)を必ず使用します。DC/DCでも入力側に大きなノイズが含まれる場合に対応できるフィルタが製品化されています。出力側に対しては、高周波特性の良いコンデンサの挿入、電源ライン用のノイズフィルタ、コモンモードチョーク、フェライトビーズなどのノイズ対策部品が有効です。
ただし、フィルタを使用する際には線間に生じるノーマルモードノイズに対するものなのか出力とグラウンド間に生じるコモンモードノイズに対するものなのかの意識が大切です。例えば<図2>の[A]はDC/DC用の入力フィルタ、[B]は雷などの入力サージに対するサージアブソーバの例ですが、図で赤色で囲ったデバイスはノーマルモード、青色はコモンモードに対してのみ作用し、相対するモードに対しては効き目は期待できません。
厳守すべし
■ 安全対策
- - 安全性とかも大切ですよね
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図3:オンボード電源の取り付け
図4:複数電源使用時の漏洩電流
電源の安全性確保は全てに先立つ優先事項です。特にAC/DCではACラインを直接扱うため、絶縁や耐圧などの各種安全規格に則った実装と配線が必須です。端子や配線間の距離(沿面距離)確保や難燃性材料の使用など厳格な設計が求められます。
オンボード電源ではマザー基板と電源の距離が規定された寸法以上になるようにしてください。規定を下回る場合はスペーサを入れるなどして耐圧を確保する必要があります<図3>。ユニットタイプ(AC/DC)では、ひとつのシステム中で多数電源を使用されることがありますが、筐体を通じてグラウンドに流れる電流は各々のコモンモード用コンデンサに流れる電流の和となるため、漏洩電流が規定を超える恐れがあるので注意してください<図4>。
諸行無常
■ 電解コンデンサ
- - 電源には寿命があるって聞いたのですが
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図5:電解コンデンサの使用例
電源も電子回路ですから、他の電子機器同様に経年変化があります。さらに、電源は発熱を伴うので構成するデバイスの寿命が加速され易い方向にあります。中でも電解コンデンサは経年的使用によって内部の電解質が劣化・蒸発してしまう有寿命部品です<図5>。結果的に、電源の寿命は電解コンデンサの寿命に左右されるため、電解コンデンサを使わない長寿命の製品も多くなりました。
レイアウトに際しては温度によって寿命が加速されることを考え電源を高温下に曝されない様にすると共に電源自身の放熱性を高めることも大切です。
安心と信頼
■ 高信頼化手法
- - 信頼性を高める方法を教えてください
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図6:冗長運転
電源をシステムとして考えた高信頼化手法のひとつに「冗長運転」があります。<図6>にその例を示しました。[A]は「N×2」、[B]は「N+1」と呼ばれる運転方式です。一見するとパワー不足を補う並列接続のように見えますが、冗長運転は一部が故障した場合に他でパワーが賄える容量を確保するものです。なお、[A]では2台づつ並列運転させていますが、通常の(定電圧)電源を直接的に並列接続することはできません。並列にする場合は電流バランス制御が必要となり専用の端子(CB)を備えた電源が必要です。
なお、話がやや逸れますが、出力電圧の精度を増す目的でリモートセンシングする例を見受けますが、リモートセンシングは負帰還のループを外部に引き出すことになるので、制御の安定性はかえって損なわれる可能性があります。