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使う前に、選ぶ前に、これだけは知っておきたい部品のジョーシキテック君の豆知識

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。

今回は【オンボード/ユニット電源編(その1)】です。

<取材協力:コーセル株式会社 様>



ブラックボックス

■ 完成された設計の入手

 - 電源くらい自分で設計できないとマズイですよね

道路や電気・ガスなどのインフラ(Infrastructure)が整っていない社会は不安定であるように、電源設計がシッカリしていない機器は信頼性を欠きます。電子機器にとって電源は基本であるわけですが、システムや回路の設計者にとっては機器に与えられた本来機能を実現のための回路設計が主眼であり、電源をその都度設計するのは大きな負担であることも確かです。

もし、電源を完成された設計として入手でき、ブラックボックスとして扱えるとすれば回路設計もパターン設計もずいぶんと楽になるはずです。電源を1個の部品として扱えるので購買や在庫といった管理サイドの負担も軽減できます。このため、最近の電子機器では完成された電源を利用する例が増えています。 組み込み用に完成された電源には、ラックなどの機器内部に置く独立したユニットタイプのものと、プリント基板上で使うオンボードタイプがあります<図1>。電気的には商用ラインの交流を直流に変換するAC/DCコンバータと、直流を別な電圧に変換するDC/DCコンバータの二種で、AC/DCはユニットタイプ、オンボードではDC/DCが大多数を占めます。接続形態面では、入出力間が絶縁されているものとグラウンドが共通(非絶縁)のものに分けられ、AC/DCは基本的に絶縁型になりますが、DC/DCでは絶縁と非絶縁の両方があります。非絶縁は回路がシンプルで小型にできるので回路内のPOL(Point of load)として使われるいっぽう、デジタル/アナログ混在のボード、モータやアクチュエータが同居したセット、ノイズが大きな環境などでは絶縁型のDC/DCでグラウンドを分離させるのが有利です。

図1:オンボード電源の製品例

基本の選択

■ トポロジー

 - 基板の上に基板を載せることになります

オンボード用の電源にはケースに収まったものと基板のままのものがあります。コスト面では後者が有利で、ケース入りは安全面やノイズ対策などの面で優れていますが、元々ボード上に実装するものなので、周囲を含むボード全体で考え選びます。 <図2>に使用例を示しました。[A]は基板外にユニットタイプのAC/DCコンバータを置き、オンボードのDC/DCでデジタル用とアナログ用に電源を分けています。モータ駆動等にはAC/DCの出力から分岐させ、ノイズや電源変動がボード上の回路に波及しないようにしています。[B]はクルマやテレコム機器の非常電源などバッテリから電源供給される機器で電子回路を動作させる場合で、この例ではオペアンプ用に正負両極性の電源を得ています。[C]はボード一枚で構成される小型の家電品の例です。一般にAC/DC電源はユニットタイプが使われますが、この例ではオンボードでAC/DC電源を使っています。 同図の下三つは「こんな使い方もできる」という応用例です。[D]は正(プラス)電源から負(マイナス)の電源を得るもの、[E]と[F]は正負両極性(マルチ出力)の電源から2倍の電圧と異なる二つの電圧を得る方法を示しました。

図2:基本使用例と応用例

敵を知る

■ 負荷の特性把握

 - 選定ではどんなことに注意すればよいですか

電源の基本仕様は出力電圧と電流です。回路(電源から見た負荷)の要求電圧と電流容量から決定されますが、純粋な抵抗のように常に一定の電流が流れる負荷はむしろまれで、実際の多くはコイルとしての要素を持ったインダクティブな負荷であったり、コンデンサとしての性質を強く持ったキャパシティブな負荷であったりします。これらの負荷では電源の立ち上がりや負荷のオンオフなどに大きな過渡現象を伴うので注意が必要です<図3>。これらでは一時的に過電圧(逆方向電圧)や過電流となって電源が壊れたり保護回路が働いて回路が動作しなかったりと言うことがあるからです。

したがって、電源の選定に当たっては負荷回路の特性を把握することが最も基本になります。インダクティブな負荷では負荷がオフ(電流が急減)する際の逆起電力、大容量のコンデンサが並列に接続されているようなキャパシティブな負荷では回路起動時の充電電流を事前に検討してください。 <図4>はインダクティブな負荷の一例で、ブリッジ回路でモータを制御しています。この場合、ブリッジを構成する二組のスイッチが切りかわる際にモータに生じる起電力が電源に加わり電源を破壊する可能性がありますので、電源出力に逆流防止のダイオードを挿入します。

図3:負荷回路と過渡特性

図4:切り換え時の過電圧と逆方向電流

賢く使う

■ 負荷に適した選定と使用

 - 他にはどんな負荷に注意が必要ですか

LEDのダイナミック点灯など電流がパルス状になる回路も一考を要します。電源の容量が負荷のピーク電流に対応したものであれば動作上問題はないわけですが、ピーク電流で電源容量を決めるとオーバスペックとなりがちです。ピーク電流に対応した品種もあるほか、ピークがごく短時間(数μs~数ms程度)で若干の電圧低下を許容できるのであれば、電源出力にコンデンサを付け足すことでピーク電流を供給できます<図5>。コンデンサの値はそれぞれの取扱説明書等に従ってください。 一方、立ち上がり時に保護回路が働いたままとなって起動できない負荷もあります。電源出力の過電流保護には大きく分けて逆L垂下とフの字垂下の二つの方式がありますが、例えば立ち上がり時に抵抗値が大きく変化するフィラメントランプ(電球)や二次電池(定電流性負荷)に負荷にフの字保護を適用すると、保護が働いたまま安定してしまう事があります<図6>。ちなみに、AC/DC電源の中には入力側にも突入電流の保護回路が内蔵されているものがあります。サーミスタを使う方式とサイリスタを使う方式の二つがありますが、何れも電源遮断の直後に再投入された場合は、サーミスタが高温になったまま、もしくはサイリスタがオンしたままの可能性があるため突入電流が流れる可能性があることを承知してください<図7>。

図5:パルス状負荷電流への対処

図6:出力の過電流保護方式

図7:AC入力の突入電流保護方式

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