

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。
今回は【CRアクティブフィルタ編】です。
<取材協力:(株)エヌエフ回路設計ブロック 様>

機能はシンプルだが
■ フィルタの種類と用途
- - CRアクティブとは何のことですか
フィルタの機能は、決められた周波数範囲にある信号は通過させ他は阻止することで、通す範囲によりローパス、ハイパス、バンドパス、バンドエリミネーション(Elimination)などのフィルタがあります。周波数成分が入り交じった信号の中から特定の信号だけを取り出したりノイズや不要な信号を取り除いたりすることを目的に、低周波から高周波まで広く使われています。フィルタを構成する手段は様々で、用途に応じて使い分けます。通信機器など主に高周波用途ではコイルとコンデンサで構成するLCフィルタ、圧電素子を利用するセラミックフィルタ、水晶フィルタ、表面弾性波(SAW)フィルタなどが用いられます。一方、音響機器や振動計測などの低周波回路ではデジタルフィルタや今回採り上げるCRアクティブフィルタなどが使われます。デジタルフィルタは入力のアナログ信号をデジタルに変換してデジタル演算によってフィルタ処理します。様々な特性を自在に実現できますが、構成が複雑になるためオーディオ装置などの用途に限られます。これに対してCRアクティブフィルタはCRつまりコンデンサ[C]と抵抗[R]それにオペアンプで構成されるアナログ電子回路です。CRアクティブフィルタのアクティブとは、CRなどの受動(Passive)部品の他に能動(Active)部品であるオペアンプを使うことを意味しています。なお、類似するものにスイッチドキャパシタフィルタがありますが、CRアクティブフィルタとは動作原理が異なります。
作るか使うか
■ 製品としてのフィルタ
- - フィルタは設計が難しそうで面倒です
CRアクティブフィルタは電子回路の一部として機器内部で多数使われます。典型的なアナログ回路であり様々な回路形式が考案されています。設計法も確立されていますが、何れも多段構成の複雑な回路となるうえ、伝達関数やオペアンプの帯域との関係などについての理解を必要とします。その意味では設計が簡単とは言えないかもしれません。
こうした負担を軽減するため、回路機能のほとんどをモジュール化した製品も出回っています。モジュールでは例えば遮断周波数を決めるための抵抗を外付けするだけで所望するフィルタ特性が得られるようになっています。
一方、音響や機械振動の実験現場などでは計測・解析信号を分離やノイズ除去のために装置として出来上がったフィルタを必要とすることが少なくありません。こうした目的のためにはベンチトップやラック組み込みタイプのフィルタがあります。実験や計測に用いるため、多くは遮断周波数をダイヤルで任意に設定でき、100を超えるチャネル数に対応できるものもあります。<図1>
特性の表現と理解
■ 用語とその意味
- - 用語が色々あってよく分かりません
主なフィルタ用語を<図2>に示しました。
図2:フィルタの用語と意味
図3:次数と減衰特性(バタワースの例)
図4:周波数応答とステップ応答
(何れも4次の場合、チェビシェフはリップル=0.3dB、連立チェビシェフはエヌエフ回路SR4BLの特性)
メリット/デメリット
■ 扱いのコツと注意
- - デメリットとか注意点とかはありませんか
CRアクティブフィルタはCRとオペアンプで構成されるのでメリット/デメリットもそれらを反映しています。例えば入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスは低い回路にできるので、入力や出力に接続する相手方のインピーダンスをさほど気にせずに使えます。このことは、他の例えばLCフィルタなどが入出力共にインピーダンス整合しないと所定の特性が得られないのと比べて大きなメリットです。設計面では周波数の変更が抵抗やコンデンサなど入手性の良い部品の値を変えるだけで比較的簡単に済むのもメリットです。一方、オペアンプを使うことから使用できる周波数の範囲には限りがあります。実質的上限は10MHz程度までです。扱う信号の大きさ(電圧範囲)も電子回路として正常に動作する範囲に限られるのでレベルの大きな信号を扱う場合は飽和に注意してください。反対に、微小レベルの信号を対象にする場合にはオペアンプ内部で発生する雑音を考慮する必要があります。