

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。
今回は【ディスプレイ付きスイッチ編】です。
<取材協力:日本開閉器工業(株) 様>

スイッチとサイン
スイッチが持つ機能
- ランプが点くスイッチとかはよく見かけます
- スイッチには回路のオンオフや信号の切り換えなどの基本機能のほかに「何がどのような状態にあるかを表示する」という役目があります。例えば電源スイッチはレバーなどのポジションによって機器が動作状態にあるか否かを示しています。その場合、スイッチだけでは表現できないので、パネルにONやOFF、切り換えスイッチであればINPUT A/INPUT Bなどと書いたりするわけです。工業計器などではスイッチのボタンに「主電源」ですとか「系統1ポンプ電源」などの表示を彫刻したりラベルを差し込んで使われたりします。また、工場の生産ラインなどではスイッチの開閉による機器やシステムの状態をより分かりやすく表示するためにはスイッチに連動した表示ランプやサイン灯が用いられますが、ラック搭載のパネル機器や操作卓ではスイッチ自体に状態表示機能を持たせた照光式スイッチがよく用いられています。最近ではスイッチの操作に連動して色と表示が変わるものなどもあります<図1>。
図1:照光式スイッチの例 発光色に応じて表示が変わるもの(左)もある

表示器がスイッチでスイッチが表示器
スイッチとディスプレイの相乗効果
- ラベルなどに対するメリットは何ですか
- ディスプレイ付きスイッチは、スイッチに求められる表示機能をさらに一歩進めたもので、ディスプレイとしての性格をより強く持った複合部品です。押しボタンスイッチのボタン部分(キートップ)に小型のディスプレイが取り付けられています<図2>。近年のディスプレイ性能の向上に合わせ表示能力が急速に高まり、単色の液晶から有機ELを使ったカラー表示のものまで製品も充実してきました<図3>。ディスプレイとして見た場合の画面サイズはスイッチのサイズに限定されるので0.5~0.6インチ程度と小さくなりますが、ドットの精細度が向上し、細かな文字や画像なども表示できます。表示データは外部から取り込むので、表示内容をいつでも自由に変更できることがディスプレイ付きスイッチの大きな特徴です。スイッチがディスプレイ化することで機能が高まり使われるシーンが拡大しています。
図2:スイッチが表示器になる
図3:ディスプレイ付きスイッチの製品例
個性的な機能を活かす
製品動向とアプリケーション
- タッチパネルとは違うのですか
- 電子機器の機能が高度化・複雑化するに連れて設定や操作法が細分化され必要なスイッチの数が増えるいっぽうで、機器の小型化が進みパネルに配置できるスイッチの数は制限される方向にあります。その結果、ひとつのスイッチに何通りもの機能を割り当てるといったことも必要になってきました。こうした要求を満たす手段のひとつがタッチパネルで、銀行のATMやFAのパネルコンピュータをはじめ各所で使われています。しかしながら、タッチパネルは表示性には優れるものの大きな画面を必要とし、確実な操作感に欠けるため使えるシーンには限りがあります。これを補うのがディスプレイ付きスイッチです。応用例としては、放送・音響機器、業務用調理器、食券などの発券機、ビルなどの防災や照明管理システム、交通管制システム、物流機器(倉庫管理)、金融システム、教育機器などが挙げられます。例えば、<図4>のような放送スタジオのコンソール/スイッチャーや為替取引を行うディーリングマシンでは大量のスイッチが並び、個々のスイッチが「何」のスイッチなのか、そのスイッチはどのような設定状態にあるのかを瞬時に把握し操作する必要があります。その場合、ディスプレイ付きスイッチのようにスイッチ自身が明確な表示体であれば操作の確実性が高まるわけです。さらに、機器の設定状態に合わせ表示を随時変更することで、ひとつのスイッチに複数の機能を割り当てることが可能になりスイッチ数を削減できます。また、オペレーターの使用言語に合わせて表示を換えるといったこともできます。表示内容も、単にスイッチの機能だけでなくON AIR/運転中などシステムの状態表示や異常発生などの警報表示、さらにカメラ画像の簡易モニタなどとしての利用法も考えられます。
図4:スタジオコンソール(左)とディーリングマシン(右)
スイッチ接点と表示部は独立
構造と設計
- 中身はどんな仕組みになっているのですか
- ディスプレイ付きスイッチは小型の押しボタンスイッチの上にディスプレイユニットを載せたものと考えて差し支えありません。スイッチ部分とディスプレイは電気的に独立しており、別のアイテムとして扱えます。表示部の構成はタイプにより異なりますが、最近の製品ではコントローラとメモリーを内蔵しデータをメモリに取り込んで表示し続ける仕組みになっています。機械的には押しボタンの可動部とディスプレイは一体化されており、ボタンを押せばディスプレイも沈み込むようになっています<図5>。これはボタン位置によってディスプレイの視野が変わるのを避けるためです。
図5:内部構造
サポートツールで簡単作成
画像の作成と実装
- 本格的ディスプレイだとすると設計が難しそうです
- 表示サイズは64×48ドットなど小さいので画像データとして考えた場合に生成・転送する量はわずかです。インタフェースはSPIなど汎用のシリアルインタフェースを採用した製品もあり、マイコン等との接続も容易です<図6>。画像データの作成には専用のツールがサポートされているのでこれを利用すれば簡単でデジタルカメラなどで撮影した画像を変換して取り込むこともできます。画像を連続して転送すれば動画やアニメーションも可能です。実装に際してはディスプレイ部の耐熱性を考慮する必要がありますが専用のソケットを使う手もあります<図7>。
図6:表示データの転送
図7:画像作成ツール例 (右は専用ソケット)