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使う前に、選ぶ前に、これだけは知っておきたい部品のジョーシキテック君の豆知識

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。

今回は【組込用電源編】です。

<取材協力:TDK株式会社様>



いろいろあるぞ

■ 機能と用途

 - 負荷の電圧と電流仕様を満足する機種を選べば良いんですよね。
図1 : 色々な電源モジュール



モジュールタイプの電源は電源の完成品です。設計の手間がかかりませんし部品1個分の手配で済みます。

用途や形態で見ると、機器の内部に置く組み込みタイプのものと、プリント基板上で使うオンボードタイプに別れます。また、ケースに収まったもののほかに基板のままのオープンタイプがあります(図1)。電気的にはAC/DCコンバータとDC/DCコンバータの二つです※。さらに、入出力間が絶縁されているものとグラウンドが共通(非絶縁)のものがあります。AC/DCは基本的に絶縁型になりますが、DC/DCでは使用する回路側が絶縁を必要とするか否かに拠ります。

タイプが決まれば、後は例えば入力:AC100V出力:5V/2Aという具合に入出力の定格で機種を選んでいくことになります。出力は出力電圧と電流です。異なる複数の出力を持った機種もあるので幅広く検討してください。

ただし、ここで注意したいのは、温度によるディレーティングです。

※:DCからACに変換するものは、インバータと呼ばれます。

夏バテ注意報

■ ディレーティング

 - ディレーティングって何のことですか?
図2 : 周囲温度とディレーティングの例

ディレーティング(derating)とは、部品や機器の信頼性を高めるために、最大定格あるいは最大出力よりも低めにして用いることを言います。電源の場合は、使用する周囲温度が高い場合に出力を常温時より小さくして使うことを指します。

例えば、図2で電源を水平に置いて使う場合、周囲温度が40℃になるときは通常の80%出力で、60℃であれば半分の出力にディレーティングして用いるわけです。ちなみに図のようなディレーティングカーブは電源のカタログやデータシートに記載されています。

スペックの一覧など数値上での電源定格は常温での値ですので、単純に負荷に要求される電圧と電流の値から機種選択すると、出力がディレーティングの規定値を超える恐れがあるわけです。

さらに注意したいのは、周囲温度とは電源の周囲温度であって、搭載する機器の周囲温度ではないと言う点です。一般的な使用環境では、機器の周囲温度は室温にほぼ等しく、40℃以上になることはあまり考えられませんが、機器内に置かれた電源の周囲温度は思う以上に高くなります。機器の内部には他の発熱体がありそれによる温度上昇があることはもちろんですが、電源自身が発熱体であることも忘れないでください。最近の電源は電力効率が極めて高くなっていますけれども、電力損失はゼロではありません。そして電力損失は熱に変換されるからです。例えば出力100W(=電圧×電流)で効率80%の電源では20W分の発熱があります。小さなハンダゴテが置かれているのと同じ熱が発生するわけです。この熱を効率よく逃さないと電源の温度は大きく上昇します。

このように、機器内部の温度上昇を勘案し、ディレーティングが必要な場合はそれに見合う出力定格の大きな機種を選ばなければならない、というわけです。

なお、出力がディレーティングの条件に達しても電流が自動的に制限されることはありません。ディレーティングは電源を使う側に委ねられているのです。この点で、最大出力電流の保護で制限回路が働いたり異常加熱で保護回路が作動したりするのとは異なります。

活かすも殺すも

■ 設置と配線

 - 入手したらスグに使えるので便利ですね。

組み込みやオンボードなどのモジュール電源は、電源をブラックボックスとして扱え、専門的な設計が不要なことが一番のメリットです。とはいえ、ブラックボックスの外側の扱い、具体的には電源の設置(配置)や配線には気を配る必要があります。

前項とも関連しますが、設置では放熱に対する配慮が必要です。図2の右側を見ても分かるとおり、取り付け方法によっても放熱効率は異なります。周囲のエアフロー(空気の流れ)にも気を配ってください。搭載機器にファンが取り付けられている場合はファンからの気流を遮らず電源の周囲を通る様にし、自然空冷の場合は対流の循環がスムーズになる位置に配置します。何れの場合も電源の周囲には空間を設け、熱がこもらないようにしてください。最低限確保すべきスペース条件はそれぞれの説明書に記されています。

いっぽう、配線の善し悪しはEMC性能、つまりノイズを出さないノイズの影響を受けないという能力に大きく影響します。

ほとんどのモジュール電源はスイッチング電源であり、ノイズ源となる要素を含んでいます。その意味ではグラウンドの配線を短くする、オープンタイプのものはシールドを施すといった対策は必要です。

もう一つ考えなければいけないのは、電源はノイズの流入経路・流出経路に置かれるアイテムであるということです。例えば、AC/DCコンバータの入力は機器外部のコンセントからのACラインですから、様々なノイズが重畳していると考えられます。電源には、機器の入り口でこれを阻止しノイズを機器の内部に取り込まないようにする働きもあるわけです。ところが、電源の入力と出力の配線を近づけたり束ねてしまったりすると、この間でノイズが乗り移り、電源を素通りして出力に現れてしまいます。

また、近くにノイズ源がある場合、入力や出力の配線で大きなループができるとループがノイズを結合するアンテナやサーチコイルの働きをします。電源の出力は回路の各部につながれるので、結果的にノイズをばら撒いてしまうことになります。

こうした影響をできるだけ小さくするためには、入力と出力の配線をできるだけ離す(入出力分離)、出力のプラスとマイナスなどペアになる配線はループとならないように並行に密接して(できればツイストして)配線する、グランドは太く短く大面積の部分へ接続、などの基本的な配線ルールをシッカリ守ることが大切です。リモートセンシング(外部電圧検出)などを利用する場合も同様の注意を払ってください。(図3)

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