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RoHSマーク

2006年7月1日の施行に向けて、いよいよカウントダウンが始まったRoHS指令。この欧州環境規制の対策に早くから取り組んできたアールエスコンポーネンツ社は5月11日、大阪商工会議所会議室で顧客企業に向けたスペシャル技術セミナー「いよいよRoHS指令カウントダウン! ~英国の現状と国内の対応策~」を開催した。
環境対応に関する豊富な知見を持つ英国のコンサルタント会社・ERA社や、日常業務の一環としてRoHS対応に取り組むディストリビュータ、さらには国内部品メーカーやRoHS対応分析を行う企業から講師を迎えた同セミナーは大きな注目を集めた。同セミナーで明らかにされたRoHS指令の最新動向と取るべき対応策についてポイントを採録する。
※ERA Technology Ltdは1920年に英国に設立された電気・電子・機械工学系の技術コンサルタント会社。
RoHS指令に関する世界的機関として、英国政府、欧州委員会等に指令制定に向けて提案を行っている。
RoHS指令適用に向けてのガイダンス セミナー風景セミナー風景セミナー風景
英国におけるRoHSの最新状況とRSの取り組み
TDKのRoHS指令対応
RoHS指令対応科学物質分析の現状と今後の課題
TDKのRoHS指令対応
TDK株式会社 安全環境室製品環境部 部長 中村 喜一 氏

TDKはRoHSだけでなく、近い将来施行が見込まれるREACH(新化学物質規 制)やEuP(エコデザインをベースにした化学物質管理)に関しても法律を熟知して、二度手間にならないような管理システムを構築したいと考えて取り組んでいる。つまりRoHSはREACHの枠組み中のごく一部に包含されるとの前提である。
TDKがRoHS対応を始めたのは2003年から。グリーン調達で購入しているものについて調査を開始した。具体的には回答書を貰い評価をした。それをもとにBOM(部品表)を形成して製品構成材料一覧表を作成し、洗い出しをした。その中で規制対象物質を含んでいるものについて、TDKオールグリーン作戦の下に全廃するもの、鉛フリー化など技術的な課題のあるもの、問題のないものというように3分類。全廃が必要なものに関しては代替をし、技術的解決ができない場合は製造を中止するという活動もする。そして、問題のない製品だけを自社で認定して売ることのできるシステムを構築した。

その中では製品アセスメントの改訂、変更管理の見直し、受け入れ検査法の改訂、RoHS対応済みの表示、RoHS不適用商品の出荷停止システムの構築などに取り組んだ。そうした全てを包含した独自のマネジメントシステムを構築し、顧客への保証体制を整備した。また我々は製品だけでなく、物質含有の情報の伝達をする必要があるので、顧客に早急に回答ができるシステムも構築している。

TDKの顧客は必ずしもエレクトロニクスに関連した顧客ばかりではなく、自動車メーカーや事務機メーカーもある。それぞれ電子機器とは違ったしきたりがあり、要求される項目が異なる。従って我々としては各業界の法律に対応しなくてはならず、一本化が非常に難しい。また調達においても、我々は部品も購入すれば成型品も購入する。基本的な化学物質の材料や調合物質も購入しており、非常に煩雑。さらに日本国内市場だけに特化した遊戯メーカーなどは従来どおりの製品を納入してくれと譲ってくれない。
こうした様々な顧客の要求に対して個別に対応することは事実上不可能。従って、この中の重要項目や最小公倍数的な要素を加味してTDKの法律(基準)を作り、顧客に対しても調達に関してもこれを適用する。ただし、ここの顧客の基準値に対してオーバーフローした部分に関しては「B2B」で個別に対応する仕組みを作り、漏れなく対応するといった運用をしている。調達に関しては化学物質から部品・成型品、包装材料まで多岐に及ぶ。このうち化学物質に対してはMSDSだけでは満足するものが得られないので、購入先に含有物質の詳細な説明を要求している。
RoHS対応の前提ともいうべき鉛フリーに関しては7~8年前から取り組み、RoHS適用除外項目の製品についてもできる限り鉛フリー製品の開発を進めてきた。RoHS対応製品については2004年12月末までに終了した。

今後の製品に関してどうするかという製品アセスメントでの問題は、海外調達をする場合、日本のビジネスグループの人間が関与していないため、現地の安かろう悪かろう商品を購入しがち。これに歯止めがかかるようなシステムを構築した。
受け入れ検査に関してはグリーン調達が基本だが、念のためハイリスク品(プラスチック類、インク等)についてはXRF(蛍光X線分析)での受け入れ検査を徹底し、問題がありそうな場合は直ちにICP(発光分析装置)で確認して工程内への流出防止を心がけている。REACH、EuPなど今後への対応を考慮すると、サプライヤーから入手したデータの管理が重要になると判断し、データベースの構築に力を入れている。
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RoHS指令対応科学物質分析の現状と今後の課題
住友金属テクノロジー株式会社 和歌山事業部 試験部 次長 岡 佳男 氏

RoHS指令では有害物質の含有量がカドミウムの場合100ppm、鉛・六価クロム・水銀・PBB・PBDEがそれぞれ1,000ppmという規制値になっている。
カドミウムは顔料、プラスチック関係の安定剤などに使用されており、酸に溶けやすい。鉛は、はんだ、鋼や銅合金の快削鋼、顔料、塩ビの安定剤などに使われる。柔らかく、融点が低いため、特性を向上させるために添加されるが、毒性が強い。六価クロムは顔料や耐食性を向上させるためにメッキにも多用されるが、三価クロムに比べて毒性が強いことから規制の対象になっている。水銀は蛍光灯などに使われる。常温で液体であり、揮発して飛んでいく性質を持っており、分析する側にとっては厄介な成分だ。

これらの分析は、簡易分析としては蛍光X線分析装置(XRF)を使う。それによって有害6物質の成分は一度に出てくるが、ここで使われているのは扱いやすいエネルギー分散型のXRF。これの問題点は、構成成分によってそれぞれの分析対象元素の感度が非常に変わりやすいこと。
そこでPBBやPBDEについてはフーリエ変換のFTIR法、あるいはラマン分光法で分析することが提唱されている。XRFを使ったこのスクリーニングで、一定の管理値を満足すれば合格というのが一般的である。こうした分析には試料の採取や調整、前処理が重要。また含有量が規制されているので全てを溶液化する必要がある。

分析方法の選択でポイントになるのは、材料が金属なのかセラミックスなのかなどによって分解方法が変わること。水銀などであれば常温でも揮発して飛んでいきやすので、それによって方法が変わる。試料形状も重要なポイント。また、どこまでの精度を出す必要があるかも考慮すべき。必要以上に精度を出すと費用も時間もかかる。分析数量によっても分析方法が変わってくる。少ない量で分析するので、代表性のあるものを取る必要がある。部分的に採取する場合は場所を明確にしておき、均一性を保つため可能なら2g以上の試料が必要。試料の採取治具や容器も対象物質が含まれていないものを使う。

前処理方法には湿式分解法(主としてカドミ対象、酸を使用)、乾式灰化法(硫酸使用、500℃以下で過熱)、マイクロウェーブ分解法(密閉、過熱)、加圧分解法、溶出法(六価クロムに適する)、溶融法、燃焼法、溶媒抽出法(PBB、PBDE向け)などがある。六価クロムは酸などで分解すると還元される、あるいは酸性の強い物質を用いて過熱すると三価が六価に変わることがあるので、酸による分解・過熱はできない。従って溶出法を使うことになるが、試料形状・溶出溶媒・時間・方法などの条件によっても六価が三価に変わったり、溶出液に溶け出す物質によっても変わるので要注意だ。測定・分析には原子吸光法(発光測定/質量測定)、吸光光度法、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマト質量分析法などを用いる。測定・分析にはそれぞれの材料によって検量線の傾きやそれぞれの感度が違ってくるので、それぞれの標準試料が作られているのが実情である。

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 英国におけるRoHSの最新状況とRSの取り組み

UK Department of Trade and Industry(英国貿易産業省)
http://www.dti.gov.uk/innovation/sustainability/rohs/page29048.html

UK RoHS Enforcement Authority (NWML)(英国立度量衡研究所)
http://www.rohs.gov.uk

European Commission(欧州委員会)
http://europa.eu.int/comm/environment/waste/weee_index.htm

ERA Technology Ltd.(ERA社)
http://www.era.co.uk/rfa.htm

RS Components Ltd.(英国アールエスコンポーネンツ社 RoHS指令関連)
http://rswww.com/rohs/

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